(と親分)


「親分来たでエエエエエエ!」
 ふそそそ〜と光を撒き散らして彼が来た。でかい声といっしょにバターンと派手に扉を開けるので、彼の怪力もあるし、家主の双子はちょっと蝶番が飛んだりしないか心配である。

「おやぶん!ブエノスタルデス!」
〜!ブォンジュルノ〜!」
 両手を広げて駆け寄ったに、思いっきり愛想を崩しながら、アントーニョがそれを抱き上げる。「キャアアアもうときたらめっちゃかわいいやんなぁ〜!天使!」そのまま、キャッキャうふふ、くるくると回り始めた。辺りに大分キラキラを撒き散らすので、掃除が大変だな、とちょっとフェリシアーノは思った。キラキラが地面に降り積もっている。まだキャッキャうふふしてくるくる回っている二人に、ロヴィーノの機嫌は降下する一方だし。
 チラと横目に確認するまでも泣く、兄の眉間にしわが寄る。やれやれである。

「アントーニョ兄ちゃん、ようこそ〜!」
 これ以上兄の機嫌が悪くなる前に、フェリシアーノも彼に駆け寄った。くるくる回るのを止めて、片手で軽くをたくましい腕の上に乗っけると、さすが太陽の人、にっこりと笑った。
「こんにちは!フェリちゃんも今日もかわいいで〜。」
「ヴェ〜、男に言ってもそれほめ言葉じゃないよ〜兄ちゃん。」
「かわいいはかわいい!かわいいは正義や!」
 よっと言いながら、を下に下ろしてやると、彼女はとことことまだ椅子にかけたままのロヴィーノの方へ駆けていった。とことこ、と言う効果音に、アントーニョの口元がニヘラ、と下がるのは見ないことにする。自分の口元も、たぶんニヘ、くらいにはなっているから。
 一方のは、ロヴィお兄ちゃんおやぶんみたいにくるくる高い高いして〜!め、めんどくせーな!ああもうほら!わかった!わかった泣くな!ほら手ぇ貸せ!なんて会話を始めている。
 口ではなんだかんだ言いながらも、楽しそうに、キャッキャくるくるぶつぶつくるくるが後ろで繰り広げられ始めるのを、フェリシアーノとアントーニョはちょっと微笑ましく見ていた。ロヴィーノからも控えめに、ちょっとキラキラが出ている。

「ロヴィとちゃんとフェリちゃん…これなんて楽園?」
「ん?」
「いやいや!なんでも!なんでもないでぇ!親分今日はお土産持って来たんや!」
 お土産持って来た方が嬉しそうなのがなんだかおかしい。なになに?と笑いながら、でも答えはわかってた。
「もぎたてフレッシュ!トマトやでえええ!!」
 おいしそうなトマトがたくさん。いかにも今しがた採ってきましたといわんばかりに、つやつや輝いている。真っ赤なトマト。いつ見てもおいしそうだ。ありがとう兄ちゃん、と笑いながら受け取ると、「どういたしまして!」と元気な返事が帰ってくる。
 時計を見ると、ちょうどお昼の時間だ。
「兄ちゃんお腹すいたでしょ〜家で食べていきなよ〜!」
 フェリシアーノのその言葉に、アントーニョ、ニカッと歯を見せて、

「実はな、最初っからそのつもりで来てん!」

 と笑った。
 それにヴェ〜と笑いながら、いかにも彼らしくって笑ってしまう。
「待ってて〜腕によりをかけてパスタ作るよ〜!〜!」
「はーい!」

「パスタ作るよ〜!」
「つくるー!」
 てってって、とロヴィーノの手から下りると、フェリシアーノの後を追っかけてはキッチンに走っていた。
「なになに!?どゆことなん、ロヴィ!」
「…最近料理覚えだしたんだよ、まだパスタだけだけど…。」
「ま、じ、で、か!」
 キラキラをいつもの倍撒き散らしながら、待ちきれへんー!と叫びだした彼に、ご馳走するのはちょっと惜しいな、と実はこっそり彼が考えていたりするのは秘密の話。




      
(めっちゃうまかったでぇ親分感動!俺のお嫁さんにならhチギー!!)