「…イギリス。イギリス、イギリス。」
「…、」
優しい君にすがりついた。君は躊躇うように右手を宙にさまよわせたけれど、それが着地したのは私の肩。
この壊れてしまいそうな背中を抱いてはくれないか、この壊れそうな頭を撫でてはくれないのか。
君の手はなぐさめるように私の肩に降った。
しがみついた背中はとても堅くてそしていつだって泣きたくなるのに。このかわいそうな頭をだいてはくれないか。
「イギリス。」
「…。」
名前を呼んだ。しょっちゅう誤解されてばかりの本当は優しい君の名を。
「ねぇ私の世界が終わるその最後の瞬間まで側にいてくれる?」
「…ばか、終わんねーだろ。」
怒ったように言う君の声は少しかすれてる。
そう、君はただ戸惑う。私になんと告げればいいか知らないから。
「…終わるよ。」
イギリスが少し肩を強ばらせる。その白い手の甲にうすく血管が浮かんでいる。少しそれを横目で見た。なぜかしら、無性に握りしめたくなる手だ。ぎゅっとそれを抱しめて、私は眠ってしまいたい。いつまでもいつまでも。ねえそれを誰か許して。
「じき終わる。なにも見なくなる。」
肩に置かれた手が、痛いほどだった。肩に顔を埋めたまま、私はその暗闇に目を閉じる。
ああ世界の終焉。
世界。私の世界。やがて真っ黒に閉ざされる。
その暗闇の向こうに、君の金色を持ってゆこう、最後にそう思う。
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