リンリンリンと電話が鳴って、さあほら急がないと切れてしまいますよお嬢さん。今日も真昼間からリンリンリンとまったく騒がしいこと!ねえ?
「なあなあちょっと聞いてーまじありえんしー!ほんとうけるんだけどまじで!」
「ああポーランド?なに?またなんかしたの?」
「俺は別になんもしとらんしー!やったんはリトなんよーあいつほんとおかしいしー!まじでまじで!聞いたらびっくりするってまじまじ!」
「ふふふ、なに?」
「リトのやつこの前買い物に行ったらさー!あ、そうそうその時むちゃくちゃかわいいリボン見つけたんよー!に似合うと思ったから速攻買ったしー!」
「ほんと?」
「まじでまじで!こんど渡すし楽しみにしとりーよなー!」
「うん、ありがと!」
「ところで今なにしとんー?」
「今?グリンピースの莢取りしてる。」
水玉のエプロンの上にころんとひとつぶ緑の豆が転がった。春の匂いだ。膝の上で莢がきれいに取り除かれて、まん丸小さなビー玉みたいな、グリンピースが銀色のボールの中に溜まってゆく。肩と耳の間の受話器からはたのしいお喋り。廊下の電話の隣に椅子を置いて、時計はチクタク、もうすぐ三時。
「まじでまじで?それでなんか作るん?」
「キッシュを焼くよ。」
受話器の向こうで歓声が上がる。今からリト誘っていくしー!はいはい、って返事をしたら時計から鳩が飛び出して少し笑ってしまった。
早くいらっしゃいおしゃべりさん?まだまだ話足りないもの、ね。
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