人っ子一人見当たらない夕暮れの公園に、小さな男の子がポツンとひとり。くちびる尖らせて、ブランコこぎながら今にも泣きそうな顔している。
買い物にでかけたときにもみかけたっけな。そう思い当たって、公園の中へ入る。ああいう顔している子供といえば、大抵相場は決まってる。
「どうしたの?君、迷子?」
そおっと近づいたらその子はすごい勢いで顔をあげた。
「ち、ちがうぞコノヤロー!シーランド君は迷子なんかじゃないですー!」
その拍子にハタリと涙が一粒ちっさなその子のまん丸な目から落ちた。その子は慌ててセーラー服の袖で目をぐしぐし擦って「今のは違うんですよ!こ、心の鼻水ですよ!」とわあわあ叫ぶ。なんだかこの眉毛とか素直じゃない性格とか、見たことある気がするなあ、と首を傾げたらますますその子は声を張り上げた。
「シー君は断じて迷子なんかじゃないんですよー!ただちょおおっと帰り道が思い出せなくて悩んでただけです!」
「それを世間一般に迷子って言うんだよ少年…。」
薄い肩をぽんと叩いたら、そうだったんですか…!なんて言ってその子は頭を抱えた。あ、つむじだ。かわいいなあ。
「シー君は…!!シー君は迷子だったんですかああああ!!!」
うわあああんって叫んで今度こそその子は泣きそうな顔をした。ああまずい、私は買い物袋の中を慌てて探った。
「ほら、シーランド君、泣かないで?私が送っていってあげるよ。はい、飴あげる。私はだよ。」
どうしてシー君の名前を知っているんですか!飴を握り締めてその小さな手のひらと私の顔を交互に忙しく見やってシーランド君が顔を真っ赤にする。彼の顔からすっかり涙は遠のいて、夕焼けの色だ。かわいいなあ。
「お家どこ?」
「海の上ですー!小さいけど素敵な国です!G8にも(近い将来)入ってます!」
「ええええそうなのごめんね聞いたことなかったや…でも海、海か…ちょ、どうやって送ってこう…!!イギリスにでも頼むか…」
「むっ!イギリスの野郎の知り合いですか!?あんなのと付き合ってたらだめですよー!あいつ最悪ですほんと最悪です!」
「ええええええ!」
|