(…ああ。)
寒い。辺りは真っ白だ。
どうしてこんなところにいるんだろう、ここはどこだ?
酷く寒い。
指先がチリチリと痺れるように熱い
けれど、やはり体中がひどく冷たくて凍えているのがわかる。
当然だ。目の前の白は雪だ。
(…きれいだなぁ。)
なんだかとても困った。
まつげに積もった雪に焦点が合ったら、それはきれいに透明な花の形をしていたのだ。
こんな花に埋もれて、ひどく寒くて眠い。
こんな花に埋もれて。
なんてきれいなんだろう。
本当に困った。ぜんぶあきらめてしまいそうだ。
(…ねむい。)
雪の世界に音はなくて、それはきっと雪は音を呑み込んで静寂を吐き出しているのだ。
だからこんなにも、静か。
(なんの音?)
ザク、ザク、と音がする。足音だ。
(だれかきた。)
その誰かが自分の前で歩みを止めたのも、自分の上に屈み込んだのもわかったけれど、すべてが億劫で、世界はすでにからは遠く霞み、非現実地味すぎていた。
「だれ。」
返事を待つ暇もない。
白で頭が塗りつぶされてゆく。
(あ、)
視界を金が掠めた。
(きれい。)
白くうつくしい世界で見たものの中で、多分もっともそれは。
01.真っ白な世界
20070324/無謀なのは一番私がわかっているさ!アハ!