20070421
堪らなくなっては目を塞いだ。
梢が揺れる音がする。命が失われる、木が泣いている。その幹が軋む音がしている。失われる、すべて、すべて 。樹が枯れてしまう。あの大きくて、優しい樹。地面に積もった緑の光。
ああ、と喉の奥では呻いた。
ああ、ああ。死んでしまう。
それが堪らなく悲しい。あんなに大きな樹。あんなに優しい光をかがって、あんなに優しい影を落として、おんなじように呼吸をしていた。吸って吐いて背伸びをして。
(何ができるんだろう。)
はじっと丸くなって目を塞いだまま、必死に目蓋の後ろの暗闇に目を凝らした。
(私に、何が、できる?)
じっと目を凝らし続けた先に、わずかに金色が光った気がした。ははっとする。それは光だ。いつだってに希望を投げかけて見せた。
は微かにわらって、もぞもぞと丸くなりなおした。まだ夜は深い。
力を抜いて、は目を塞ぎなおす。
明日になったら。
それだけ考えて、一つ息を吸って吐いてそれからまた吸って、はそおっと夢へ沈んでいった。
まだ夜は深い。
15.目蓋の底の暗闇を