「ああ、」
ダオスは大きく息を吐きました。心がいっぱいで、言葉なんて見つからなかったのです。
だってほら、目の前にこんなにも長い間待って待って待ち望んでいた人がいるのです。
その人は変わらずに、首を傾げてはにかむように微笑んでいます。
確かに、ダオスに向かって微笑みを投げかけているのです。夢なんかではありません。
「待っていた、ずっと。ずっとだ。」
ダオスの声は年老いて、すっかり低くひび割れて、教会の鐘の音に似ていました。
その老いた手のひらを少女の手のひらに重ねて、ダオスはにっこりと笑いました。
「あいたかった。」
その言葉に、少女が、女神が、ただの女の子が、ほほえみます。
ふたりは手を握りあってずっとほほえみあっています。
緑の乱反射の中、いつまでもいつまでも、ほほえみあっています。


33.ふたたび




20070429/