頭のてっぺんからつま先まで、を見下ろしてダオスは困った顔をした。
見下ろした彼女は、ひどい顔をしているし、ソックスの片方はほとんど脱げかけている。
彼女の服装はどうみてもここいら一帯の気候には合っておらず、この寒さと恐怖で、すっかり血の気が失せていた。ただ泣いているために頬 と目が真っ赤だ。
その目が、ひどくたくさんの感情を映して揺れているものだから、ダオスは正直に、しまった 、と思った。
どうも私がいた世界と違うようなのですが。
この極寒の地で正気とは思えない服装と、自らの名に反応をしないところ(ただの世間知らずとも考えられたけれど)、それになによりも、彼自身が彼女に感じる違和感がなければ、本気でそのような言葉は信じなかっただろう。
いや、信じたわけではなかった。
ただ、確認する価値はあると考えたのだ。
そして、が倒れていた場所に、見つけてしまった。
彼女の言葉を裏付けるものを。
それはダオスにとっても非現実的なもので、けれど も知識としては知っていた。彼は彼なりに、動揺していたのだ。
(だからといってこれはなかろう。)
ダオスは小さく舌打ちをすると、掴んでいた腕を引っ張って、そのままを抱えあげた。
「ぎゃあ!」
悲鳴まで不細工だ。でも勢い余って宙にぽおんと吹き飛びそうなくらい軽いと感じた。
あまりにはかないいきものだ。人とはみなそうだ。
だのに群れ固まると悪意と欲の床となり破壊しか生まない。
(この娘はこの世界にひとりだ。)
ダオスはふと思い至った。
では、では、たったひとりの人間からはなにが生まれるのだ?
06.いきもの
20070330/だっておうじだものきっとしんしだよ(願望)