誰もいない。誰もいない。誰もいない。
電車は動いていない。誰も乗っていない。
非常装置のレバーを引いて、扉を開けると外へ出る。
しんと静まり返って、空気すら静止しているようだ。
そのままよくしった街を歩いた。
誰もいない。
海には潮騒が、砂浜には白い砂、緑は風に揺れている。
かわらない。
けれどだれもいないだれも、だれも。
日は刻刻と動いた。
傾いてゆく。ああ日が沈む。
だれもいない。
「あはは。」
はがっくりと頭を落とした。影法師はみじめなほど長く黒い。
だれもいない。地面にぽつりぽつりと涙が落ちた。
ああそういえば。
足からは血が出ている。
「くつわすれた。」
09.しらないまち
20070412