目を開けたら誰かが泣いていて、セフィロスはおや、と思った。こんなことは珍しい。むしろ自分の目覚めに誰かがてたちあっているということがまずこれまでにないことなのだ。
さあ一体誰だろうと思い首をめぐらせるとそれはだった。セフィロスを包む掛け布団に突っ伏して小さく嗚咽を漏らしている。なぜだろう、ついさっきその顔を見たような気がしたんだけれど忘れてしまった。それよりなんだってそんな小さな手を真っ白になるまで握りしめて泣くんだろうと彼は思い、少し首を傾げる。
そしてその彼女の後ろにザックスも見えた。泣いてはいないが真っ赤な目尻をして、真っ青な目をいっぱいに見開いてセフィロスを覗き込んでいた。
おや、とおもった。めずらしい、と。こんなにも切羽詰った表情は戦いの最中にだって見られるものではない。珍しいものを見た、と思った。
「そんな顔をしてどうしたんだ?」
思いのほか掠れた声が出て、セフィロスはおやと思った。まるで死に掛けてるみたいじゃないかと。
「明日はバハムートが降るぞ。」
能天気だけが取り柄だろうにと最後まで言わないうちに、ばっかやろう!と涙を目にためて怒鳴られあげくおもいっきり頭をはたかれた英雄は、はて自分は一体なにかしただろうかと首を傾げてそして――
「首が痛い。」
「当たり前だろ。」
「腹も痛いな。」
「そりゃそうだろ!あんたなあ!もうほんともう!」
ぎゃあぎゃあ言い始めたザックスを横目に、まだ泣いているをセフィロスは目を丸くしてみた。その目は真っ赤で溶けてしまいそうだと思った。さてどうしてだってこんなことになっているのか彼にはさっぱり皆目見当もつかない。どうしてこうなったのか。頭の中で整理して組み立てて眺めて納得する。
ああそういえば。くらいのものだった。珍しくしくじった。それは覚えている。
さて、と一息ついてザックスのわめき声を意識の向こうにおいやり「あんた聞いてんのかよもーほんとこっちがどんだけ心配したかとって聞いてる!?聞いてないよね聞いてないよな聞けよ!」そおっと躊躇いがちに手をが胸の前で縮こまらせた手に伸ばしてそれで。
「、泣くな。」
とりあえず今一番大事だと思われる一言をぽつりと。
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