「おかしいなぁ!世界最後の日っていうのは、もっと緩慢にゆったりと進むもんなんだよ。」
芝居がかった様な言葉が突然聞こえてきて、クラウドははっと目を凝らした。
洞窟の奥、暗闇の中、つまりはセフィロスの背後から、誰か歩いてくるのだった。カツンカツンと踵を鳴らす軽やかな歩き方は、どうしてかなひどく聞き覚えがある気がした。
セフィロスは、ほう、と驚いたようにもとれる呟きをこぼす。
「か、久しいな。」
いたのか、と目を細めて、セフィロスは振り向きざまに少し笑った。
まるでついさっき会ったような、100年ぶりにあったような、そんな時間や空間の隔たりがあるようでないような、なんとも気軽な挨拶だった。実際200年時を隔てたって、彼は久しぶりの友人に偶然会ったような、そんな対応しかしないのだ。そんな人間の概念を、彼は飛び越えてしまった。実際さっき会ったばかりでも、久しい、と彼は感じるのかもしれない。
「久しぶりだね、セフィロス。」
と呼ばれた人間が、にっこりと笑う。女性だ。クラウドは確かに見覚えがあるような気がしたが、まったく知らないような気もした。いつもの感覚だ。自分が自分でなくなるような。
(ああなんだってこんなときに。)
やっとセフィロスを前にして、だのに頭痛と吐き気が止まらない。立っているのがやっとのような、眩暈。はそんな様子のクラウドをセフィロス越しに見て、少し、驚いたような顔をしたが、訳知り顔でただほほ笑むだけだった。クラウド?、ティファが隣で、心配そうに呟く。エアリスの手がそおっと背中に触れて、すると眩暈も耳鳴りもどこか遠くに、さらさらと溶けていった。クラウドはすっと背筋を伸ばす。なぜ自分が体調不良に陥っていたのか、いや、そんな状態になっていたことすら忘れていた。
「あんたは誰だ?」
クラウドの言葉に、またはわらう。
「私?私は、そうだなあー。」
今度はさっきとは違ってニヤリという不敵な笑みだ。
「通りすがりのクラウド、君のお助けウーマンてとこだね。」
そのニヤリ、にセフィロスがきれいに首を傾げてみせる。銀の髪が肩からこぼれる。洞窟の暗闇の中、それは魔光の結晶のように、ほのかに光っている。
「…なにが言いたい?」
低い声にも動じず、は悠然とセフィロスを横切って見せた。そしてクラウドの前に立つとくったくなく笑う。あいかわらず、硬い頭だねえ、と言いながら。
「最近ものすごい速さで、君が人間の世界を終わらせようとするものだから。」
知ってるよ、とがセフィロスにほほ笑む。セフィロスはただその通りだったので何も言わなかったし、クラウドたちもが何者なのか計りかねてその背中を見ていた。
「だから、これは、まだ終わりではない。こんな性急に終わらせようとしなくたっていいじゃない。」
「…つまり?」
やっとセフィロスの顔が不機嫌そうに歪む。それにが嬉しそうに笑ったのを、背中のクラウドたちは知らない。
「終わらせないと、言うことだ。」
の剣が、すらりと抜き放たれる。しゃらりという鞘走りの音。その剣はまるで明け星のようにくらい中で光った。
そうしてがクラウドたちを振り返ってわらう。
「私は、大変そうなことしてんじゃない?まあひとまず私も混ぜときなさい。」
後悔しないから。さっと刀を一振りして、するとセフィロスの幻が掻き消えた。
なあんだやっぱり偽者か、そんな呟きに、クラウドたちは唖然とする。
「またすぐに、、クラウド。」
どこかとおくから聞こえてきた、並べられた名前に、クラウドはこっそり頭を抱え、は、というわけだからよろしくみんな、と笑った。
お終いは
かく語りき
20070428/ミスリルマインあたりのつもり。