「…。」
正直どうしよう。80インチのご自慢の薄型液晶テレビの真ん前、真っ赤な二人掛けのかわいらしいソファー。そこに膝を立ててクッションを抱いたまま、
は固まっている。
なにもテレビの、ドラマが感動的過ぎたわけじゃない。
問題は男だ。
彼女の隣で、彼女と同じような格好で、真っ白でモフモフなクッションを抱きしめて、世間一般に天下無双の英雄と言われる銀の長い髪を今は楽に後ろで纏めたその男は――唇噛みしめてボロボロ泣いていた。
正直今すぐこの場から立ち去り記憶を消去したい。(誰か!誰か私の頭にサンダガを!一思いにドカンと一発!)
「……セフィロスさん?」
「…黒…………なんてやつだ…!」
「…おおーい、セフィロース。」
「…… も見ただろうあの猫にゃんを……!」
「見た。見たよ、見たから。」
「ううっ…、」
この英雄さんをどうしよう。部屋には彼のすすり泣く声ばかりが響いている。
そんなごつい筋肉でなにを!と言おうと思ったけど止めた。それを言ったら面倒見がよくて情に厚くて気は優しくて力持ちな頼れるあんちくしょう、アンジュールはどうなる。セフィロス以上の筋肉をしておきながら、彼の数倍、涙もろい。更によく考えれば、この間ザックスも、なにか本を片手にマジ泣きしていた気がする。まずその場合、は彼が泣いていたことよりも本を読んでいたことにおどろいたのだけれどもそれは今関係のない話だ。
セフィロスは泣いている。ボッロボロ泣いている。
なんでだろうどうしたんだろう新羅。これでいいのかこれがいいのかソルジャー。
「…セフィロス、ね、ね。泣かないで。」
頭をそおっと撫でたらセフィロスはもたれかかってきた。銀の髪。いつもは戦場で舞っている。それが今では小さく丸くなって、猫、そうだ猫みたい。
「…。」
「ほら、今度は楽しい映画見ようよ、ね。大丈夫だいじょうぶ。」
低い声で、ああ、と言ってセフィロスが少し笑った。
たまにはこういうのもいいかもしれません。冬。
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