明るいギターの旋律を口ずさむを後ろに乗せて自転車は坂を下った。
潮の匂い、海の風だ。なんとなくうきうきする。
気づけば背中の歌も行進したくなるような、ずんずんずん、というリズムに変わってた。歌詞のない歌は、ひどく きれいに景色に溶けてしまう。道は砂が積るコンクリに変わる。
潮騒が聞こえる。
低い屋根の間を抜けたら、もうそこは青く青く透き通って光る夏の海だ。自転車を止める前に、が飛び下りて追い越していった。
「海!」
が振り返ってわらう。なんだ、ちょっと洒落たつもりの青いスカートなんて履いて。海だなんて、言われなくたってわかってるのに。
自転車の鍵がみつからなくて総悟は少し焦った。
噫、歌詞のない歌は、ひどくきれいに海に溶けてしまう。
海を見に行こう