わるい
おんな#1「総悟君の髪はえらいきれいやねぇ。」
その人はため息を吐いて、沖田のくすんだ金の髪を眺めた。それは、さらさらと光の粒を集めて仄かに輝いている。その髪を撫でるしなやかな指先と、その指の持ち主の黒く艶やかな髪の方がきれいだ、と沖田は思ったのだけれど、ただ黙っていた。
「ほんま、うらやましいわぁ。」
黒い目を細めて、 その人は少し笑った。
美しい口角の形と長い睫毛。その人が瞬きをしたり動いたりする度に袖口や首筋から甘い芳香が零れる。眩暈がしそうで沖田はやはり黙ってじっと拳を握っていた。騙されてはいけない。この人が、本当にほほ笑みかける相手は、決して自分ではないのだ。
20070415