肩のなだらかなラインをじっと見ていると、不思議な気分になる。着物の大きな孔雀の目が、こちらを見ている。こちらを見ている。
「お客さんどないしはったん?」
女が首を傾げた拍子にシャラリと髪飾りが鳴った。涼しげな銀が暗闇に光る。なにやらじっと黙っている客を不思議におもったのだろう。無理はない。
「いえ、」
なにも、と続けることはできなかった。女が笑った。その美しい口角を吊り上げて。
「なんや聞きたいことがあるんでしょう?」
目を丸くすると女はまた笑った。
「でもうちはそう簡単にはお話しまへんえ?」
楽しそうに、女が笑う。
「…お金は倍払います。」
「お金はええわ…ねえ、お名前は?」
ほんまのお名前よ、と女が哂う。
「…山崎、です。」
山崎はん、と嬉しそうに俺の名前を口の中で転がす女はそれはそれは美しかった。
「山崎はんは、にんじゃ、ね?」
「そんなもんじゃありません。」
忍者なんて時代遅れな。それに女がなんだと口を尖らせる。
「なんや、うち忍者のお客なんて初めてやからちょっとわくわくしとったのに。」
じゃあ山崎はんはなにやってはる人?さあこの女からどうして話を聞きだしたものか。襟から生えた細い首から目が離せないまま、俺は考える。考える。
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