拝啓窓際の君へ



「リザ、やっぱりあれ、かーなーり!変だよ!」
どうしたのかななんかへこんでる?へこんでるよね?ベコベコにへこんじゃってるよねえ!
うきうきしながら私が小さく耳打ちすると、リザもわずかに表情をかえて(長い付き合いだからね!この顔はうきうきしてるよ!)頷いた。
私たちふたりの熱い視線の先にいるのは、我らが未来の大総統、ロイ・マスタング大佐であります敬礼!
今彼は、この部屋で一番いい椅子に座って一番景色の良い窓から外を眺めている。手袋を縫いながら。
チクチクチクと縫いながら時折、あいたっ!と小さく叫んで、恥ずかしそうに左右を見て、またチクチクチク… 。すぼめた背中がなんだか乙女チック!でもその横顔にキラリと光るものに、雨が降っているぜ、という言い訳は効かない。だって室内だもの。残念だね、大佐。

どうしてそんな羽目に陥っているのか、すごく、気になるけど、大佐が縫い物という貴重なショット故に誰もが声をかけそびれている。(むしろみんなひいてる。)
私はツッコミてぇ…!と右手が疼くのを必死に堪えていた。
「いじり倒したい…!うおお耐えて!耐えるのよ!!ここは一歩下がって大人になって放置ぷれいよ!! 」

リザががんばって、と肩を叩く。このクールビューテーな親友は、実はお茶目でかわいいものずき、そして無類のプロレスマニアという素敵な一面を併せ持っているのだ。(どつぼだぜじゅるり!)

がんばって、というリザの応援も空しく、やっぱり私には無理だ!無理すぎる!こんな気持ちわるいおいしい場面を逃すなんてやっぱりできない!それにみんなの期待のまなざしをひしひし背中に感じるんだぜ!
「たーいさ!なにやってるんですか!いや見ればわかりますけどね!なんでそんなおもしろいことになってるんですかなんでですかスマートかつクールかつアヴァンギャルドに答えてください!」
大佐は目をぱちくりさせて、少し考えるように首を傾げた。なんて乙女チック!(後ろの方でハボックがなにやら叫んでいる。)(無視しておこう。)
にあげようとおもっ「はーいみんな撤収ー!きもい大佐は放って置いて、ほおら!気づけばもう定時だぜ!飲みいこうぜ!」
ひゃっほー!と叫んだら、みんなノリがいいよな、全員がおおーと叫び返してくれたので、私はウキウキと鞄を取る。アームストロング少佐も誘おう、心の中で固く誓って、それからリザを振り返る。
「リザー!行こうー!」
リザは微かにほほえむと(でもこれで最上級の笑顔なんだよ眼福!)すぐ行くわ、と言う。なので私は、じゃあアームストロング少佐誘ってくるねえ、と笑って扉を閉めた。

「大佐。」
「…はい。」
乙女チック!にしくしくと泣きまねをするロイにリザが微かにほほえむ。
「そこの書類、全部処理しておいてくださいね。」
「でも、これ、あの、書類の束が87,5センチほどあるんですけど。」
しどろもどろの敬語になりながらも、最後の意地だ、ロイがにっこりとわらってみせた。リザは微かにほほえむ。
「見事な目測感服いたしました、大佐。正確には87,694センチですけれど。」
大丈夫、まだ明日の出勤時間まで、14時間もあるんだから、ねえ、拝啓窓際の!





20070416/熱の所為にしてわらってゆるしてよ!
さんがアームストロング少佐とおそろいの腹巻を愛用しているとしって手袋プレゼンツ☆をおもいついた大佐のお話。(いや、ごめんなさいすみまっせん)(ジャンピング土下座な勢いで。)