白薔薇の 造花の花弁 凍てつきて 心もあらず
(中原中也『むなしさ』より抜粋)
「フランシス様、どうぞ一曲、今宵は我が娘と踊ってやっては頂けませんか。」
ほら困っている。その微笑み。
扇の下で、私は欠伸を噛み殺す。真っ青なドレスの、裾に隠れた、尖った爪先で、私は退屈を踏み殺す。
おやすみなさい、とまばたきの合図窓枠の外の空。
私は貴公子の青い目を見ない。
「…すみません。ダンスは苦手なものですから。」
ああ穏やかな微笑の下の、なんて無表情。
あなたは欠伸している。あなたは退屈している。
あなたはこの惰性を飼い慣らす術を知らない。