なんて愚かな小娘だろう。馬鹿げてる。
だってお前は、殺人人形に恋してる。
本当に馬鹿だな、それはたやすくお前を殺すよ。今は隣で歩んでいても、オーダーひとつでお前を殺す。
だって彼は忠実なお人形。だって彼は彼女の銃口。引き金を引くのは今は彼女で、それが変われども変わらずとも、主の心一つであれはたやすくお前を殺せるのだ。躊躇いなどとは永遠に縁のないそのガラス細工の目玉で。
それでも、と信じるのは愚かなこと。
それでも、と愛するのは勝手なこと。
好きにすればいい、報われないのがお好きなら。口づければいい、夢を見ぬ目蓋の上に。
不毛な恋をしている。お前は死の虜。お前のこめかみに当てられた、その冷たい銃口に、馬鹿だな、まだ気づかないのかい?
お前は死ぬよ。死んでしまう。
人形は笑わない。お前の愛には答えない。
神父は言うだろう。お止めなさいあなたが傷つくだけだから。
修道女は言うだろう。お止めなさい傷つくのはあなたなのだから。
女傑は言うだろう。お止めなさいあなたが傷つくのを見たくないから。
教授は言うだろう。お止めなさい無駄なことだから。
剣士は言うだろう。お止めなさいあなたには悲しんでほしくないから。
贖罪者は言うだろう。やめとけ止めとけお前が泣くだけ損だろう。
魔女は言うだろう。馬鹿ねだからお止めと言うのに。
誰もが気づいて、見えているのだ。お前の頭を吹き飛ばす、その黒く重たい銃口に。
だのにお前には見えないのだね、自ら目隠ししたのだね。
愚かしいよ、滑稽なお前。人形と踊るワルツほど、美しくも悲しいことはない。
悩ましいよ、浅はかでかわいそうなその頭。人形と採る食事ほど、意味はなく渇いたことはない。
愛おしいよ、お馬鹿で一途なその思い。人形と交わす口づけほど、冷たく虚しいものはない。
それなのにそんな夢を見ている。お前の目玉。飴玉のようだね。飾る意味はあるのかい?
だってそうだろう。
自らの首を絞めていることにも気づかずに、お前は今日も、あの人形を見つめるのだろう?
ああなんて愚か。愉快愉快!ああなんて悲劇。愉快愉快!
さあ黄金の矢で。貫けよクピド。林檎の代わりにあの哀れな頭をひと思いに、さぁ。
序曲の幕は開けるよさあさあそうして主人公が死ぬよ。お人形に恋したかわいそうな頭の女の子が死ぬよ。
彼女がぱったり倒れ伏したその後で、その花を摘もうよ頭に咲いた歌うたう花、お前を死に至らしめる、その美しいエデンの花を。
(ウィリアム・テルによせて) |