(…ゆめ。)
夢だった。夢だった。
ほおっと息をついて頭から布団を被りなおす。
暗い和室は、なんだか少し怖い。まだ胸がドキドキしている。
(ねえ、どうして美鶴くんは、)
訊きたいのは俺の方だ。どうしてひとりでいられないのか、そんなのこっちが訊きたいのだ。さんはずっとひとりでいたんだろう。ならなぜ平気な顔していられるんだろう。
おばあちゃん、と彼女の呼ぶ人おかげだろうか。それならさんは、
(…運が良かったんだ。)
俺とは違う。
違う。
ほんとうに?
はっとして布団から顔を出した。声が聞こえた気がした。また少しうとうとしたようだった。
(ほんとうに?)
あれは誰の声だったろう。
ふっと障子の向こうに明かりが見えた。
廊下を挟んだ台所のほうだ。明かりがついている。
なぜかなそれだけのことで泣いてしまいそうだった。もう小学5年生なのに。
5年生にもなってひとりでいられない自分、5年にもなって怖い夢が怖い自分。
でもこのまま、大人になってもこのまんま、夜が怖くてあの日が怖くてひとりが怖いままなんじゃないか、そんな気がしてるんだ。(それでひとりじゃいられなくなる。)
明かりがついている。オレンジの明かりだ。
09.だって夜は暗いから