たくさんたくさんころしたので、細い肩がわずかにふるえている。その後ろ姿を見て、イルミは一瞬で悟った。
ああ、この子は圧倒的に違ういき ものだ。この子はこの闇の中呼吸することはできない。
だから、イルミは、そおっとその子の腰を両手で掴むと 、そのまま腕の力だけで抱えあげて、高い高いってするみたいに、彼女を光の方へ支えあげた。
これで息ができ るかな、って、本当にまじめに、彼はそう考えて首を傾げる。
は驚いて、「イルミ?」って名前を呼んだ。
そのまま、手を放して、掬い上げるようにだきあげる。その時くるりとその体を半回転させて、自分の方を向かせるのもイルミは忘れない。
光の中に生まれた、光を満たしたおんなのこ。その目はぴかぴかひかっていて、柄にもなく申し訳ないような変な気分になる。(…不思議だな。)
「おーい、イルミー?」
がイルミに抱き上げられたまま、おーい、ってイルミを呼ぶ。イルミは無表情のまんま、それでもどこかやさしくなったようなつもりで、を見上げた。
「…なんではお金が欲しいのさ。」
ごろんごろんと足元に転がった骸の山を、が困ったなあ、と少しほほ笑みながら見る。
ハンター試験の真っ最中、尋ねられた志望理由に彼女はあっけらかんとしながらも、私さー最低80億必要なんだよねえ、と真面目に困って見せた。そんなを、アルバイトに誘ったのもイルミだったけれど、その理由を聞いていなかった。だって、その時は、そこまで興味なんてなかったんだもの。(とても彼女が強かったということ意外にね、誘った時点で、実はとても興味があったのだろうけれど。)でも今では、この史上初、ゾルディックさん家のアルバイターは、イルミにとってもゾルディックさん家にとっても、けっこう重要なポジションを占めつつあった。光の匂いをぷんぷんさせながら、この子は母とも笑ってみせる。なんとも奇妙な、いきものだった。
「うーん、…欲しいゲームがあるんだよねえ。」
それが高いのなんのって!その答えに、そうなのか、とイルミは素直に納得した。
「へえ、そんなにするんだ。」
逆にイルミのあっさりとした様子にがぎょっとして身を引く。でもイルミに抱えられていたところだったので、あやうくブリッジのような体制になるところだった。は慌てて、今度はイルミのほうへもたれかかった。イルミの肩に手を置いて、イルミの頭より高い位置から窓の外を見る。もうすぐ夜明けだ。赤い日が昇る。
「そんなにおもしろいの?そのゲーム。」
なんとなく、の特に意味のないその質問にが泣き出しそうに笑う。ミルヒあたりが聞いたら欲しがるだろうな、イルミはなんとなく弟を思い出した。でもただそれだけ。思い出しただけ。
「知らないよ、幻のゲームなんだって。」
がやっぱり泣き出しそうに笑う。
異なる世界に、繋がってるらしいんだ。小さく小さくが呟いた言葉にイルミは首を傾げた。
「"ここ"から脱出できるかもしれない唯一の"道"かもしれないんだよ。」
が笑う。その目はうっすらと光を集めて光った。
かもしれないかもしれないって憶測ばっかり。イルミはあんまり、憶測や希望的願望だけで話をするのは好きじゃない。
ふうん、って頷いて、とりあえずを抱えなおした。いい匂いがするな、嫌いじゃない。そう考えて無表情のまんま、ほんの少しわらったつもりになってイルミは目を瞑る。
おーいイルミさーん?もしもーし?おい、こら!ちょ!てめ!無視か!無視なのかあ!泣くぞ!
そんな変てこな声を聞きながら。
それは闇色の光
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