春の日向に空が溶けだすように明るい昼間です。
芝生も空に背筋を伸ばして、その指先の延長線を、光ににじませています。緑の産毛のその下に、ももいろや黄色やそれから白の、ちいさな花が隠されているのが手に取るよ
うにわかる、そんな穏やかな日差しがたっぷりと庭には満ちていました。
私の影は深い緑で、日向を私といっしょになって横切ります。
海のようにも、見える、滑らかな芝の上を私はま っすぐその人に向かって歩きながら、小さくわらいました。
彼女は、ゆらゆら揺れる白い星の椅子に腰掛けて本を読んでいるようでした。白い頁がちらちらと光っています。
私がそおっと後ろに立つと、頁に青く影が映りま したから、あなたが気がついて小さくほほ笑むのが、見下ろす私にもわかりました。
「こんにちは、王子。」
ゆっくりとふりかえったやわらかい緑の目が、こちらにほほ笑んでいます。
それだけで、私はとても優しい気持ちになれると思うのです。
たとえるなら、そう今日の春の光のように。
「…カブでいいんですよ。」
私は心の底からそう言いました。
「え?」
少し驚いた顔で、見上げてくる人に私はほほえみ返します。
えぇ、だって私は本当にうれしいんですからね。
「カブって呼んで欲しいんです。…少なくとも、あなたと、みんなには。」
「でも、」
「お願いです。だめですか?」
「…いいえ」
彼女は、マルクルにするみたいに優しくほほ笑みました。日向の花の香るような、そんな気がします。
「よかった」
本当によかったと、私は思っているのです。知っていますか?
「 カ ブ」
あなたがなんだかからかうようなやさしい調子でそう呼ぶので、私はなんだかうれしくて、泣きたいような気持がしました。だから、私は、応えるかわりに恭しくきれいな手をとって、その手首の真ん中にそおっとくちづけました。
だってその方がずっと素敵でしょう?
あなたは猫みたいに、はにかんでくすぐったそうにほほえみま す。
噫なんて優しい午後!(このままこの緑の日向に溶けてしまったらきっとどんなにかしあわせでしょうね。)
(さあマルクル、行っておいで無邪気なふりをして行っておいで、わあーカブ来てたんだね!(裏声)とか言って行っておいでほら行っておいで、ね、よぉしきまり!さあ!行きたまえ!(輝く笑顔で))(…ハウルさん大人気ないです。)(ヒン!(多分同意している))(手首にキス…場所のチョイスがいちいち…ってちょっ!待て!デコチュ
ーまでなら許す!でもだめ!もうだめ!離れろ!(ここまでひとりごと。わっと物陰から明るい日差しの中に飛
び出して)離れろそこのカブあたま!うわーん!(ダッシュアタック!))(ちょ!ハウルどうしたの!)(え!なに
するんですかハウルさん!?)(…ハウルさん大人気ないです。)(…ヒン。(まずまちがいなく同意))(…ソフィー!
ソフィー!ハウルさんがー!)