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枯渇し続ける大地。呻き嘆くばかりの記憶。
彼の世界はずっと最初から失われてばかりだ。
ところが、ある時、 彼を黄金に燃える光が駆け抜けた。そうして彼は目を醒ました。彼は初めて、枯れてひび割れた大地を見た。どこまでも、乾いた砂ばかりが続く大地を。
あの光の熱が、まだ彼の中で燻っているようだった。大きな声で、光 は叫んでいた。なにかとても、あたたかで優しく素晴らしいことを叫んでいた。
その声がまだ耳の奥に響く。
逆に以前の、身を突き刺すような、絶望感はどこか遠くで、鐘の音のようにしか聞こえない。
何故だが無駄に胸が騒いでしまって彼はそこに手のひらを当てた。
あたたかい。
何かを期待して、心臓が脈打っているのだ。
彼は見る。荒れた大地を。
鼓動がますます早くなる。
噫。噫?
彼は解らない感情を見極めようと大地をじっと眺めた。
そうだ。ここに種を蒔けば。
彼はふと思い立った。
ここに種を蒔けば?
いつか芽吹くだろうか。
涙も集めて流し たら。みずたまりくらいにはなるだろうか。そこに魚は。棲めるだろうか。
押し殺した叫びを大声で吠えたなら 。風になるだろうか。雨雲を運んでくるだろうか。
閉じてかりの眼を開いたなら。空は見えるだろうか。やわらかな雨は頬を掠めるだろうか。
己を抱えるてのひらをさしだしたなら。誰かに触れるだろうか。
そこに誰かが。
いるだろうか。
いればいいと、初めて彼は思う。
きっといてくれればいい。
塞いでばかりの耳を開いたなら。
「…風影様。」
すぐ耳元で声がした。噫、その音こそ。
(ひび割れた大地に沁み入り枯れた緑を呼び覚ます。)
ひび割れた大地に降る雨の音は。 |
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