枯渇し続ける大地。呻き嘆くばかりの記憶。
彼の世界はずっと最初から失われてばかりだ。
ところが、ある時、 彼を黄金に燃える光が駆け抜けた。そうして彼は目を醒ました。彼は初めて、枯れてひび割れた大地を見た。どこまでも、乾いた砂ばかりが続く大地を。
あの光の熱が、まだ彼の中で燻っているようだった。大きな声で、光 は叫んでいた。なにかとても、あたたかで優しく素晴らしいことを叫んでいた。
その声がまだ耳の奥に響く。
逆に以前の、身を突き刺すような、絶望感はどこか遠くで、鐘の音のようにしか聞こえない。
何故だが無駄に胸が騒いでしまって彼はそこに手のひらを当てた。
あたたかい。
何かを期待して、心臓が脈打っているのだ。
彼は見る。荒れた大地を。
鼓動がますます早くなる。
噫。噫?
彼は解らない感情を見極めようと大地をじっと眺めた。
そうだ。ここに種を蒔けば。
彼はふと思い立った。
ここに種を蒔けば?
いつか芽吹くだろうか。
涙も集めて流し たら。みずたまりくらいにはなるだろうか。そこに魚は。棲めるだろうか。
押し殺した叫びを大声で吠えたなら 。風になるだろうか。雨雲を運んでくるだろうか。
閉じてかりの眼を開いたなら。空は見えるだろうか。やわらかな雨は頬を掠めるだろうか。
己を抱えるてのひらをさしだしたなら。誰かに触れるだろうか。
そこに誰かが。

いるだろうか。
いればいいと、初めて彼は思う。
きっといてくれればいい。
塞いでばかりの耳を開いたなら。
「…風影様。」
すぐ耳元で声がした。噫、その音こそ。
(ひび割れた大地に沁み入り枯れた緑を呼び覚ます。)

ひび割れた大地に降る雨の音は。























































































































































20070424/















今更ながらに我愛羅の砂の国編(でいいのか?)を読んだんですよ。
わあなんてあのひとりぼっちでひとりよがりの寂しい少年が強くて優しい
いとしい大人になったんだろうって思わず泣きそうになりました。