200704~20070610
OH!MyMy!!(シリウス)
なかよし?(雲雀恭弥)
20070610~20070924
雪の名前(ロッカ)
最強最弱の彼女(ダオス)
calling(ハリー)
シリウスの笑顔はたまらなくチープだ。
誰彼構わず少し嬉しい事があっただけでその無愛想ともとれる表情を崩してあけすけの笑みをさらけ出すのは本当に止めてくれないか、とは思う。
硬質で近寄りがたい高潔な雰囲気さえ持っているのにそんなものは笑うと軽く消し飛ぶ。がははと悪戯に声をあげて笑っても絵になるシリウスが酷く恨めしい。
(あーもうちくしょう!)
は飽きずに今日もまた校庭でジェームズと馬鹿笑いをするシリウスを睨み付けた。
(やつめ、驚いて慌てている。)
あと3分もすればやはりこちらも飽きずにシリウスが半分怒ったように心細い顔をしながらこの図書館に飛び込んで来るに違いないのだ。
(ちょ!なんだよ!なんなんだよ!俺、またなんかしたか?なあ!なあ!)
はニヤリと笑うと読みもしない癖に手近にあった 魔法薬学の本を手に取った。
(この上なく貴重な君の不細工でいとおしい表情は私のものさ!)
あっはっは、と大声で逆さに本を見ていることにもまったく気付かずに笑う。
(だいすきよ!わたしのかわいい!)
OH!MyMy!!
↑
「群れるなんて私もごめんですよ。」
驚いた。
「群れるんじゃなくて、対等の存在として関わっていけばいいじゃないですか、私は、それがいいな。」
雲雀さんたら実は哲学少年だったんですね!とその子はふふふと肩をすぼめてわらった。
「は?」
「は?ってあれ、てっきりヤスパース好き少年かと。」
「誰それ、いや、君、それ以前に僕と対等な立場に立てるとでも思ってるの?」
「(知らねぇのかよ!)なに、雲雀さんはそんなにも自分を持ち上げちゃってるんですか、確かに唯我独尊オーラでてますけど。え?自分至上主義?けしょいー。」
「なにけしょいって。誰に口聞いてんの噛み殺すよ。」
「ぎゃあ怖い怖い怖い顔がマジ!まったくすぐ武力に訴えるんだから、落ち着いて。
ほらほら、ガンディーでいきましょうよー。はい、非暴力(にっこり)」
「…(無言でトンファーを構える)」
「暴力反対!」
「…ぴーぴー煩いね。」
「雲雀さんも結構しゃべってますよ。」
「…対等な人間に敬語ってどうなの。」
「!」
「…なに、そのたるんだ顔は。」
「最上級の、うれしい顔だよ!よっしゃあ、雲雀!仲良くしようぜ!」
「だから群れるのは嫌いだって。」
どか!
「…!(ひ ど い!)」
「なに、僕と仲良しごっこしたいわけじゃないんでしょ?」
「…おうよー対等かつ真剣な関わり合いに怪我はつきもんってかー?
さあひばたん!あの夕日に向かってはし「らない。」
「はし(もご)「らないからね恥ずかしい。」
「…もがが(恥ずかしくなかったら走るのか。)」
「何その目は。」
「別にー。」
「あと今度ひばたんとか抜かしたら轢き殺すから。」
「イエッ、サー!(あれおかしいよ?サー!てなんだサー!て。愛ちゃん?いやいやいやサーっつったらsirだろ。あれこれ対等?対等?ちょ、対等なのこれどーなのよこれ!)」
「…(変なの。)」
振り返って君が笑った!これってひょっとして!すごく!しあわせなことなんじゃないのかな!(やったな私!)
なかよし?
↑
*
「ロッカと言います。」
にこやかにほほえんだ少年の名に、は懐かしい音を聞き取った。
ロッカ。六花。きっと偶然だ。だけれどなんてすてきな名前だろう。
「ロッカ?」
「はい。」
は知らず知らずにほほえんだ。
その笑みがあんまりにも素直で幼い子供のような美しい微笑だったものだから、ロッカは目を丸くする。
「ロッカ。ロッカか、良い名だね。六花かぁ。」
歌うような節回しで、が何度も名を言うので、ロッカはなんだか照れくさくてはにかむ。
ただ最後の名の発音の僅かな違いに、「ろっか?」と、てれかくしに首を傾げた。
「うん、あのね、私のいた世界では、むっつの花と書いてろっかと読むの。そしてね、六花というのは雪の別名なんだ。きれいな名でしょう?」
「…雪。」
冷たい雪、寒い雪。それを統べる女王は冷徹で残忍で無慈悲だ。ロッカは少し寂しげにほほ笑んで首を傾げる。ちょうど冷たく心の狭い自分を思った。雪のように閉ざしていて、そう、僕は許すことはできない。許すことができない。
決してこの暗く重い雪は解けたりしない。
自嘲的な気分になって、ロッカは少しほほ笑む。名は体をあらわすというのは、こういうことなのだろうか?
しかしそれとは正反対にはにこにこわらって肯いた。
「そう、雪。私雪好きだなぁ。やさしいと思う。」
どういう意味だか一瞬わからなくて、ロッカは目を丸くした。あどけない動作にがこっそり(かわいいなあ)笑みを深める。
「雪がですか?」
なんだか内心恐る恐るロッカはそう訊ね返した。
はにこにこ笑ったままで、なぜだろう、少し泣きそうな気がする。
「うん、とてもね。」
そう、私を、すべてを眠らせる白い白い雪の綿布団、空からゆうるりゆうるりと降り積むのだもの。
はただただ黙ってほほ笑むばかり。
雪の名前
↑
どたどたと走る騒々しい音。、そんな音を立てて走る人間は、あいにくこの城にはたった一人しかいない。ダオスがなんだろうと思って振り返ると、思ったよりすごいスピードで、が駆けてくるのが見えた。
「ダオスー!!」
聞いて聞いて聞いて聞いて聞いて聞いて!聞いてーってかもう、まじで聞いて!
そのままどーん!と身体ごと、ぶつけるようにダオスに突進してくる。抱きつかれる、というより突進される、の方が相応しいのは仕方がない。だもの。
ダオスはほんの少し笑って、何か言おうと「さて、今何回聞いてと言ったでしょう?」した。
けれども、そんなことを言いながらニカッと笑って見上げてきたを、一体どうすればいいのか。
期待いっぱいの目をしては、ダオスを見上げている。の無言のキラキラ攻撃にダオスはうっと詰まって僅かな笑みを引っ込めて、それからゆっくり冷静に声を発した。
「…9回。」
がぎゃあ!と顔をしかめて頭を抱える。
ちゃんと数えてた上に保険のひっかけにすらかからなかったアァァ!と叫ぶ自分より二周りも低い背丈を見下ろして、ダオスはあああと半分顔を覆って息を吐いた。なんだかもうすでに疲れた。(…もう帰っていいだろうか。)
*
「他に用がないなら私は行くぞ。」
ダオスはそう言うと赤いマントを翻してに背を向けた。
しかしその端っこを、逃すまいとが必死に掴む。ダオスは首が締まって思わずうっと呻いた。でもはお構いなしにマントを引っ張り続けている。死ぬ! 窒息死する!
「用ありますあります!聞いてっていうのは本当なんだってば!だからいーかーなーいーでー!」
「…まずは放せ。」
「はい?」
「その手をはなせ。」
ああと気がついてがパッと手を離すと、ダオスは少し前につんのめりそうになった。が、ここは魔王とか王子とかの威厳と根性で踏みとどまり、大きく息を吸い込む。深呼吸に感動する日がくるとは思いも寄らなかった。
「なんなんだ?」
もう一度、律儀にの方を向いて、ダオスは訪ねた。
の方が背が低いので、自然ダオスは見下ろすことになる。のなだらかな、肩を描く曲線が見える。は自然に、顔を上げ目を合わせて話をするのでそういうところがダオスは好ましいと思う。はっきり話すところも、遠慮のないところも。すこし変わっているところは、おもしろい、という一言で片付けてしまう。深く考えるのは面倒だ。違う世界の生き物なのだから。ダオスはこっそりと、おかしくなって笑う。だって違う世界の生き物なのに。
「なんだ?」
もう一度、ゆっくりと訪ねてやる。はうれしそうににこにこしているし、こうして見下ろしていると、穏 やかな気分がするから不思議だ。
「あのね!これ!見て!」
がどばーん!と虫眼鏡のようなものを差し出す。どこから持ってきたんだそんなもん。ダオスはじっと見つめた。しかし、それは、どうみても。
「…スペクタクルズだな。」
「うんスペクダクルズだよ?」
ダオスが物言いたげにを見る。は未だに目をキラッキラさせているばっかりだ。もう一度ダオスはの手の中のものを見た。
「…スペクタクルズだ。」
「うんだからそうだって。」
しん、とふたりの間に見事な沈黙が下りる。
「…だからなんなんだ?」
一瞬の静寂を破ってダオスが至極真面目に首を傾げた。どこからどう見たところで普通のスペクタクルズなのだ。のはしゃぎっぷりの意味が、彼にはまったく掴めない。の方を見たら、なんだか呆れたようにぽかんと口を開けてダオスを見ていた。
「いや、これってさー、敵の情報調べられるんでしょ?」
ほら、とがレンズを覗き込んでみせる。それは一度小さく光って、ダオスの情報が浮かび上がった。なんとなく複雑な気分で、ダオスはそれを眺める。
「それで、私は自分てこっちじゃどんなもんなのかなーと思って自分で自分をスペクタクルズしてみたわけです。」
それには少し驚いて、ダオスはを見る。なんだか楽しそうに、は笑っているので、安心しておいてよいのだろうか。ダオスの心配は杞憂のようだった。はすぐ顔に出るのだ。
わかりやすくていいと、こっそりダオスは思っている。に言えば、きっと怒るだろうから言わないけれど。なんだかが来てから、ダオスにはどうでもいいような、ささやかで他人から見ればきっとかわいいんだろう、考え事が増えた。こっそり、そんな風な考え事だ。
「そしたら、見てーこれ!」
歯を見せて笑いながら、がポケットから自分のデータの入ったスペクタクルズを取り出した。どれ、と受け取ってダオスが固まった。別にが、バジリスクの爪を使ったわけではない。でも、それは見事に、ダオスは固まっている。一方のはおかしそうに隣で肩を揺すって笑ってばかりいた。ダオスのぽかんとした顔を初めて見たので。
『・
Lv:1
HP:1
TP:8
一切の魔法及び物理・アイテムによる攻撃の無効化。』
「私ってひょっとして最強最弱?」
のくすくす笑いも、ダオスはそっちのけで固まっている。
それがますますおかしくってはあははと声をたてて笑った。
最強最弱の彼女
↑
僕はふと、彼女の声を聞いた気がして立ち止まる。
右を見て、左を見る。だれもいない。
けれど聞こえた気がしたんだ。
直接脳髄の真ん中に響くその声。間違えるはずがない。確かに聞いた。
それはちょうど僕の背中のずっと向こうから聞こえてきたように思う。
じっと耳を澄ませてみる。ずっと遠くの囁きを拾うには目を閉じて。そう、それが一番良い。
どこかずっと遠くの方で、風がなった。さわさわと梢を撫でて。その小さな音の隙間に、僕は神経を張り巡らせる。彼女の声が僅かでもすれば、それは鈴のように、細かく震えて鳴るだろう。そうして僕に、届くはず。
(さやさやさらさら、ちちち、ばさっばさ、さわさわさわ。)(チリン。)(さわさわ、さやさや。)
ほら。やっぱり聞こえる。
聞こえてきた声に、泣き出しそうになって、噫、でも僕はふりかえらない。
僕はまだふりかえらない。(というよりそうすることができなかったんだ。)
じいん、と胸に響くその名残を、僕はずっと耳に反芻させている。おりたたんで大切にしまうように、僕はそれをぎゅっとこころのなかにためておくんだ。決してひとつもなくしたりしないよ。いつだって、取り出しては眺められるように。いつだって、大事に大事にしまっておけるように。
いつかはそれが、ぼくのこころをいっぱいに満たして、そうしたら、そう、なんだか優しくなれる気がする。しあわせを作り出せるような、やさしい人間に、なれる気がしてるんだ。
ほら、その声、そのひびき。
「ハリー。」
そうだ、ずっとそうよばれたかった。すきとおったその声で。
僕はまだふりかえらない。ふりかえらない。ふりかえらない。
(そのときはきっと。)
calling ↑