真夜中にシリウスは目を覚ました。
再び体には力が戻ってきている。
見上げれば星は変わらずに木々の合間を廻っている。
空に、あの光り輝くななつ星を並べたのは、だろうか。
暗い木々の切れ間から、呼ぶように遠く、瞬いている。
(きっとゆける。大丈夫だ。)
その小さな光にシリウスは確信する。青白いななつ星が呼んでいる。
彼女の吐き出したうつくしい言葉の結晶こそ、あの星に違いないのだもの。
言葉は遠く、遠く銀河の果てで叫んでいる。夜空の果てまで響く声で。
シリウスは立ち上がった。
いつか並んで眺めた、洞窟の底で、コロコロと湧いていた、清澄な、あのコバルトブルー。流れる音が耳もとに聞こえるようだ。
あの湖の青をぎゅっと濃縮したような星明りが、シリウスに道を作った。
いつの間にか力が戻った脚は、歩ける、ゆこう と力強く囁いている。
「…ゆこう。」
シリウスは答える。
まだ星はずっと高く遠い。
けれど、それを追ってなら、どこまででも歩いてゆける気がした。(例えば水の上
だって。闇の中だって。)
懐かしい友人たちから、たくさんのことづけ預かってしまった。
シリウスは一度夜空を仰いで、わらった。見えるかな、聞こえるかなって、祈るみたいに。はちきれそうなこうふくを抱えて。
「今行くよ。」
ハリー、きみにあいに。
それから昔なじみに挨拶をして古い話をして一緒にわらって、その前に文句をいわなけりゃならないやつに会わなくては。
「そうしたら。」
呟くと今度はつま先を見てわらう。
(そうしたらいちばんに、、会いに行こう、空の汽車に乗って。)
>>銀河と迷路4
20070402 |