びょうびょうと風の吠える嵐の夜、雨が打ち付ける窓に、稲光と共にその人は突然出現したのでした。
くろいろマントを
いっぱいに拡げて、その人は赤い目玉をびかびか光らせていました。
真っ黒な髪も白い肌も恐ろしいほど
うつくしいのです。

「…あなたはだれ?
神様?」

神様?それはいい!」

私のことばに、くろいろマントのその人は、大層楽しそうに大声でわらったのでした。

「ははは!そいつはとんだお笑いだ!おもしろいなぁ。
君の名前は?

「私はです」

私はちゃんと答えました。

、神様はね、死んでしまったんだよ」

「なぜ?」

「あんまり年寄りだったのさ。なにせこの世ができた時から生きてきたんだからね。
 僕がすこぉし息をふきかけただけでね、ほぉら、すっかり塵になって崩れちゃった」

そういうとその人は、きらきらと光る粉を手のひらからふりまきました。

「これが神様の死骸だよ。きれいだろ?」

きらきらきらと粉は私に降り注ぎます。
なんてきれい。 私はただ頷きました。きれいなのは、本当の本当だからです。

さようなら、かみさま?どうぞよいねむりを。



20070324