箱を開けたらいっぱいの白詰草。
白と緑。あの丘の詰草。
私は詰草の花束を持ち上げました。
ひんやりとつめたい。
ああ、なんてかわいい贈り物。
箱には詰草がいっぱいに敷き積められていて、硝子のコップがふたつ。
こんなすてきな贈り物、君以外に私は知りません。
「…ありがとう、ゴドリック。」
噫、少し照れながらこれを選ぶ彼の顔が浮かぶようです。めんどくさくても照れくさくても、それでも彼は送ってくれるのでしょう。しあわせをかたちにして。
あの丘を優しい手で摘み採って。
「誰から?」
後ろから手が伸びてきました。ゴドリックとは違う、ごつごつした手のひら。でも同じに優しい手のひら。
その手が透明なガラスを摘み上げます。魔法の贈り物を。
「…懐かしい友達から。」
私はもうひとつのガラスを両手で抱きしめました。
ひんやりやわらかく冷たい。優しい温度。
「へえ?」
彼は笑いながら首を傾げました。
「秘密の友達。」
私はガラスを抱きしめたまま目を閉じて言いました。
「ああ、よく話す魔法使いみたいな人?」
彼はからからと笑うと、きれいだなぁ、とガラスを陽に透かしました。
それはもちろん魔法じゃありません。でもそういうきれいなものを見つけ出す力は魔法使いにもまったく劣らない人なのでした。
だからこそ、私は、魔法も古い友人達とも距離を置きました。
とても優しい人です。だから、私は魔法もいらな いのです。
ただ懐かしい匂いのする便りが酷くうれしいだけで。
白いリネンに包まれた世界に、懐かしい鮮やかな色を届けてくれる人。
まだ私を覚えてくれている世界がある。
そこにゴドリックが、金の髪をなびかせて、あの丘にいる。
私に笑ってくれている。
とてもしあわせでした。 だいじなともだち。
そして傍らの優しい人。
私の世界。
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