2008年1月――
寒い寒いイングランドの冬。しかしここウィーズリー家ではそんな寒さをものともせず、熱い戦いの火蓋が切って落とされようとしていた―――。
長男はいざとなったらちびドラゴンくらいなら召喚してもいいかな、と考えているし、次男はその優秀な魔法使いの腕を存分に奮うつもりである。三男は言うまでもなく勉学に励み、その下、双子は戦いに足踏みしポケットに自信作をこれでもかと詰め込み不敵な笑みを浮かべながらその時を待っている。六男はいささか不安ではあるが戦うしかあるまい、覚悟は決まっている。末っ子の長女はと言えば、自らへの優遇と勝利を確信して止まない。
彼らの父は、戦い、カッセン、イクサ、サムライ!ジャパン!チャンバラ!タタイテカブッテジャンケンジャポン!ハラキリ!オダイカンサマオタワムレヲー!とこの戦いをネタの仕入れ元がとことん怪しいジャポニズムで貫き通すつもり満々であったし、母は母で、思う存分コタツと鍋を楽しむつもり、つまり勝利は確定のようである。そんな家族内抗争に、もまた、いやちょっと待ってこれ私のコタツだから、と当然のごとく名乗りをあげる。
そも戦いの発端はが持ち込んだコタツと鍋であった。日本の冬の風物詩を気軽に楽しんでもらおうという心ばかりのサービスである。
しかし、いかんせん、コタツのサイズとの懐具合には限界があった。コタツは見事、この大家族+1を収容するだけのキャパシティを持たず、どんとウィーズリー家のリビングに居座っている。
コタツで鍋、という魅惑的なシュチュエーションで日本風の冬を満喫できるのは果たして誰なのか?そもそもいつになれば膨らみ魔法使えばいいじゃん。ということに誰か気づくのか気づかないのか!
あいにくこの場には、いやちょっと落ち着いて冷静になってください、僕ら魔法使い!と言える人間はひとりもいない。
こうして、今、戦いが幕をあげる―――。