「タワー!」
神楽が何か言ったが、スクーターのエンジン音でさっぱり聞こえなかった。
「あア?」
銀時が聞き返すと、神楽は耳元で、しかも思い切り!少女特有の甲高い声で叫んだ。
「タワー!高い!アル!な!」
きいん、と大声に耳が痺れた振りをして、銀時は少し目を瞑り顔をしかめた。ぐらりとスクーターが揺れる。ぎゃあ銀さん!と新八が悲鳴を上げた。
「おま、そりゃ!たけえだろうよ!」
銀時はなんとかそれだけ叫び返すとスピードを上げる。
あれは花だ、の墓前(というより真上に)に供えられた、宇宙の導として光を放ち天を突いてそそり立つ、人間からすれば巨きな巨きな(あの日のの笑顔のように)、そして宇宙から見れば小さな小さな(あの日のの腕のように)花だ。
あれは花なのだ。
あの日あの場所に確かに花が咲いていた。死ぬな生きろ殺すな生かせと声高に叫んでわらっていた。
あの細い腕、細い首。今でもまだ覚えている。
「なァにが畳の上で大往生、だ。意味わかって言ってんのか、あの馬鹿娘さんはよォ。」
喉の奥でごくごく小さく笑ったら、ちょうど答えるようなタイミングでタワーの誘導灯がチカチカと光った。それに年甲斐もなくおどろいてしまって、またスクーターがぐらり、と揺れる。
ぎゃあーきゃっほー!という後ろの騒々しい悲鳴に、生かすって難しいよォちゃん、とちょっと心の中で泣きまねをして、そうしたらなんだか楽しくなって、「飛ばすぞォ!」と叫ぶと銀時はますますスピードを上げた。
君は花のような
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