天の海に舟を出そうと、君が言った。
 舳先が夜を圧して進み、棹の先が月に生える桂の枝に絡む。透明な魚がぷかりと燃える雲を吐き、水面に垂らした指先が空に波紋を投げる。今宵、風はなく闇晴れ渡り、真空に花の咲く。
 星屑の空、悠々と割って、君の渡す舟が出る。



星間航路