リンロンロン、と遠くでかわいいチャイムが鳴ったので、は忙しく動かしていた手を止めた。ふわふわと宙に浮いたままのヤモリを、そのまま無重力でもないのに丸くなって同じように宙に浮いた水に優しく放り込むと、緑やピンクの液体の入った試験管をそおっと試験管立てに下ろす。
リンロンリンロンリンロンロン。
チャイムが鳴る。このチャイムの鳴らし方にはひどくとても覚えがあった。
はおや、と思って散らかった本に向かって杖を一振りする。見えない光が本を攫って、見事に棚へぶち込んだ。ヤモリ入り以外にもたくさん浮いている水球が部屋から出ないように机の上あたりを浮遊するよう固定させると、汚れたエプロンを取り眼鏡をはずして、玄関へ急いだ。途中の廊下に積み上げられた羊皮紙を、足で脇へ追いやりながら玄関へ急ぐ。途中鏡でちょっと解れた髪を直した。
リンロンロン。
チャイムが鳴る。
はむんと胸を張ると、さっと扉を開いた。
「リーマス!」
やっぱりそこにはリーマスが立っていた。よれよれの外套、接ぎだらけの外套。まったく前と変わらない。むしろますます接ぎが増えた気がするのだから仕方がない。は少し眉をしかめた。
「やあ、。」
久しぶり、そう言って、リーマスがにこにこと穏やかにほほえんで帽子を取ると、ちょっと会釈した。大きな手。の好きな手だ。は呆れたようにわらった。
「こんにちは、リーマス。…噫、ルーピン先生のほうがよかったかしら?」
そう言ってニヤリと首を傾げるとリーマスは困ったように頭を掻いた。
「元、だよ。。」
リーマスはなんでもない、といった風に笑う。
「辞めてきたんだ。」
それには思い切り目を開いて、ぽかんとした。ばかじゃないの、って言う表情を前面に押し出したつもりで、すごく心配そうな顔になっているのに彼女自身はまったく気がついていないのだからしかたがない。リーマスはますます笑った。
「とりあえず入れてよ、ココアが飲みたいな。」
今度こそがばっかじゃないの、って顔をする。
それにリーマスはにっこりして、靴の泥を拭いた。
晴れたら
日向でワルツを
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