爪草の丘は今日も風に吹かれて。
一面の緑、白爪草。
クローバは一面です、一面です。
遠くに見えるのは遥かに、空と雲、そして森ばかり。
丘を下ると湖があって、大きなイカが住んでいました。湖を渡ると林があって、大きな城があって、子供たちが学びます。
爪草の丘は今日も空の下。
「はい、どうぞ。」
女の子が笑いました。男の子に爪草のネックレスをほどけないようにそおっとその首にかけてやります。花をひとつ摘むたびに、女の子はそこに囁きを込めます。ひとつ編む毎に、女の子はそこにほほ笑みを込めます。
男の子は知っています。それらがどれだけ自分のためだけのものであるのか。それがどんなにいとおしいものなのか。
それもまた幻です。
爪草の丘は今日も。
「ハリー!」
ほら、子供たちが駆けてゆきます。
2007/05/06/あとがき