ちいさな子供ふたりは、爪草の丘で大きく歌いました。まっさおな空を流れる雲の果てに、声が届きますように って。
森は緑。うつくしく、やさしく、街とも村とも大違いです。
子供たちは、もう気付いていました。自分た ちが大人のいうように悪魔の類いなら、そうです、この魔空の森は、ふたりに優しいはずなのでした。
だから、 恐ろしい白い魔女も、ふたりに恐ろしいはずはないのでした。
「きて!きて!森の魔女!」
早く僕らを助けてよ 。縋るようなさびしい気持ちでふたりはずっと手を繋いでいました。
早く早く。
森の端に、黄金色の陽が沈みま す。じんわり溶けるように、輪郭をにじませて、森の樹々の逆光がとてもきれいでした。
おや、森から誰か来ます。その人の真 っ白なローブについた透明なガラスの鈴が幾つにも重なってうつくしく鳴り渡っていました。
ふたりはどきどきして 、両手を取り合って身をちぢこめました。こわいような、ふあんな気持ちです。でも、微かな希望も、ふたりの手のひらで小さくかがやいていました。
「ゴドリック…。」
女の子のちいさなささやきに、ゴドリックと呼ばれた 男の子は、彼女の指先を包み込むように手を握ることで答えました。
「大丈夫、大丈夫だから。」
その言葉に女の子はかすかにほほえんで頷きます。
「。」
はっとしてゴ ドリックが言いました。と呼ばれた女の子が、ゴドリックの目線の先をみますと、白いローブのあの魔女が、もう随分近付いていました。
凍えて身を寄せ合う小鳥のようなふたりに、魔女はやさしくほほ笑みました。
「こ ど も た ち よ」