ってなんなのだろう。 どうしてかしら、その考えが、或る時から時折、金太郎のこころにぽっかり浮かんでくる。 は女の子だ。わらうとお星さまみたいで、当たりがぱっと明るくなる。 年は金太郎の二つ上で、今は高校生だ。蔵ノ助たちと同い年。制服の赤いリボンがよく似合う。の髪はゆったりと長い。会った時は肩よりも短かったけれど、高校へ上がって伸ばしだして、今ではもう肩よりも長い。風が吹くとさらさらと解ける。 身長はというと、もう金太郎よりもずいぶん低い。20センチは違うのではないだろうか。なにせ金太郎ときたら、2年生に上がって40センチも伸びたから。第一印象で、自分よりも背の高いお姉ちゃん、というものがあったけれど、それきりで、1年ほど経ってから再会したら、自分よりずいぶん小さいので驚いた。金太郎の大きくなったことに驚くの頭のてっぺんを見下ろすと、なぜだかずいぶん嬉しかった。 は優しい。最初だって、道に迷って途方にくれていた金太郎に声を掛けてくれたし、それからだってずっと優しい。あんまり甘えすぎたらあかんよ、と蔵ノ介にはたまに釘をさすように言われるが、だって優しいんだもの。 もうすっかり秋も深まった道を、金太郎は自転車を押して歩いた。ぺったりぺったりとサンダルの音が、後をついてくる。 きんたろくん、とその声で呼ばれると、なんだかふわふわした心地がする。 の家の犬と遊ぶのが楽しい。の家のご飯がおいしい。のお父さんもお兄ちゃんもお母さんも、みんないつも笑っていて、楽しい。 も笑っていると、もっとたのしい。 ぺったりぺったりついてくるサンダルの音の向こうに、やっぱり最初の問いが浮かんでくる。 考えること、あんまり金太郎は得意ではないから、よくわからない。テニスの他にこうやって、なにかひとつのこと、ひとりのこと考えるのって多分あまりないことだ。ひょっとしたら初めてのことかもしれなくて、だからこそよくわからない。 そもそも蔵ノ介にへんなこと、聞かれなければこんなことを不思議に思うことなんてなかっただろう。 自転車全速力でかっ飛ばせば1時間とちょい、ちょっと遠くに住んでいる、かわいいねーちゃん。優しくって小さくってきれいな。またおいで、っていつだって笑ってくれるから好きだ。 好きだよ。 それってなにか、特別なことなんだろうか。 首をひねっても彼にはちっともわからないから、考えるのを止める。お腹がすいたな、今日のご飯、お好み焼きだろうか。なんとなく空気中にソースの匂いをかぎ取って、金太郎は一度、ぐうと大きくお腹を鳴らした。 空では気の早い一番星、きらきら光っている。 |
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